月刊まち・コミ98.11月号

焼け跡のくすぶり
〜十三回〜


  

【再び神戸沖空港問題を考える】

 去る八月二十一日より一ヶ月の間、住民投票に向けて署名集めが行われ、神戸市民が熱くなった。前哨戦のビラ配り、期間中の街頭署名集めに参加して、神戸市民の空港に対する疑問の言葉を沢山聞いた。これは震災で、家族や友人、家や仕事、多くのものを失った人々が優しさを体感し、目覚めたものと実感した。
 「大事なことは住民自ら判断し、決めよう」と云う運動になって広がりを見せた。特に主婦の方々の積極的な動きが目をひいた。政党にも何の関係のない人達が勝手連で動いて民意を問うに、この三十五万強の署名、そして有効数三十一万弱はすごい意味を持っている。始めてのことで戸惑いながら、その書式たるや聞いたこともない受任者から始まり、しかも行政区単位で、自署での住所、署名日、氏名、生年月日に捺印(拇印でも可)。特に女性にとって生年月日を記すことは抵抗あり、さらに男女を問わず拇印を押すことの意味、それは警察官の前での行為を想起させ、嫌悪を感じさせる。このことを乗り越えて敢えて署名したものである。乗客が、貨物が増え、空の時代の到来と云う市当局の発想。今着工しておかねば将来の神戸の発展に禍根を残すと。その奥には、神戸空港が出来たら、市街地のど真ん中にある京阪神や、その背後からも最も便利な大阪空港は危険この上もないので廃止。そして第三種神戸市営空港は、規制緩和で国際空港に昇格と読んでいる様である。民間人は確実な需要が見込まれ、費用対効果があり、さらに今あるものをより効率利用出来ないか、尚また、それが世の中に本 当に必要なものかを考え抜いて決断する。少子高齢化が進み、環境問題を糾される時代にあって余りにも”カケ“と考えられたのではないか。推進に当たる神戸市長、兵庫県知事、商工会議所会頭と市民の間にほころびを感じる。
 「破れたとき直ぐ一針繕っておけば大きな繕いをせずにすむ」

兜コ庫商会 田中 保三

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